【東海×内科】個人医師のライフステージに合う提案でクリニック承継を実現

【東海×内科】個人医師のライフステージに合う提案でクリニック承継を実現
エリア 東海地方
診療科目 内科、整形外科
運営組織 個人経営
譲渡理由 高齢化
運営年数 20年

コンサルタントの丁寧なヒアリングにより、買い手自身も想定していなかった魅力を提案できたことで、M&Aの前半はスムーズに話が進みました。途中、地権者が急逝するという想定外の事態により状況が急転し、進行が滞る場面もありましたが、臨機応変にM&Aスキームを変更し、承継を成功に導きました。

【売り手側】高齢で引退を希望するが後継者が不在のまえだクリニック院長前田先生(76歳)

まえだクリニック(仮称)は東海地方某市にある内科・整形外科の個人クリニックです。大病院の勤務医だった前田先生(仮名)が30年前に開院しました。以後、多くの地域住民のかかりつけ医として親しまれ、患者が定着しています。

その地域でも人口減少は進んでいますが、競合となるクリニックが少ないこともあって、まえだクリニックの患者数はほとんど減っていません。直近の医業収益は1億円で利益は3,000万円を超え、業況は好調でした。

数年前から前田先生は急速に体力の衰えを感じていましたが、親族にはクリニックの後継者となれる人物がいませんでした。廃業も考えましたが、地元の患者さんのことを考えると、どうしてもクリニックを残す責任があると感じたようです。

そこで、長年懇意にしている地元地銀の担当者に相談したところ、M&Aを検討してはどうかとアドバイスを受けたのでした。

【買い手側】2回目の承継開業を希望の安田クリニック院長安田先生(56歳)

譲り受けたのは、首都圏で内科の安田クリニック(仮称)を経営されていた院長の安田先生(仮名)です。

安田クリニックは、10年ほど前に安田先生が別の先生から承継して開業しました。以前の患者を引き継いだため開業から数年は順調な経営だったものの、最近は診療単価とマーケットとのずれが大きくなっていました。

ちょうど前年にお子様が大学を卒業して就職されたこともあり、安田先生はいったん現在のクリニックを閉院し、別の地域で再開業することを検討します。収益性を重視した承継案件探しを開始するため、私たちのサイトに登録してくださったのです。

地銀からのご相談で基本合意まではスムーズに進行

私たちは、某地銀を通じて前田先生をご紹介いただきました。その地銀はM&Aの相談窓口を設けていたものの、医療機関という特殊性もあるため、専門性を持つ仲介会社に実務を任せたいという意向でした。

早速譲渡先を探してみると、興味を持つ医療法人はすぐに現れたものの、地方のため医師のアテンドに時間がかかりそうでした。しかし、前田先生は高齢による体調不良があったため、なるべく早期の譲渡を希望します。

そこで、私たちは自ら院長として診療できる個人医師を優先して、安田先生にコンタクトを取りました。そして、状況を十分ヒアリングした上で、年齢や2回目の承継開業の意図などから、地方のクリニックの譲り受けをご提案しました。

買い手自身も気付いていなかった望み

安田先生は、当初、地方への転居は想定していませんでしたが、前田クリニックの収益性の高さには魅力を感じられたようで、「とにかく一度見てみよう」と私たちと一緒に現地を視察しました。

その機会を通じて、前田クリニックには地域の患者さんが多く通院されていること、そしてクリニックにしっかり利益が出ていることを確かめられました。

また、周囲は自然にあふれた温暖な気候で、すぐ近くに有名な温泉があることも気に入られたようで、「もうすぐ60歳にもなるし、こういうところに住んでクリニック経営をするのは、理想かもしれないな」とおっしゃいました。

実際に現地に訪れてみることで、ご自身でも明確には意識していなかった希望が明確になったのかもしれません。そこからはテンポ良く話が進みました。

地銀の担当者とも面談を行い、承継後は地銀からのサポートを受けられるという話があったことも、安田先生の安心につながったようです。譲渡価格についてもスムーズに折り合い、基本合意まで進みました。

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地権者の急逝という想定外の事態を乗り越え、無事に承継へ

そのまま最終契約まで至るかと思いきや、想定外の事態が生じました。前田クリニックが建つ土地の地権者である山下氏(仮名)が、急逝されてしまったのです。山下氏は地元の大地主、前田先生は、山下氏から土地を借り(普通借地権)、その上に自分で建物を建てクリニックとしていました。地方ではよくある形です。

今回のM&Aにおいては、そのクリニック建物は譲渡される資産になりますが、土地の借地権契約については、買い手の安田先生があらためて山下氏と借地権契約を結び直す予定でした。医療法人が主体となって借地権契約を結んでいれば、M&Aにおいてその契約も包括承継されますが、個人契約であるため再契約の形を取らざるを得なかったのです。

当然、私たちは地権者の山下氏には早い段階で接触して話を通しており、借地権を再契約し、今まで通りの地代の支払いで問題ない旨を口頭で了承を得ていました。その後、M&A交渉と並行して、山下氏とも書面での契約を結ぶための面談を打診していたのですが、体調不良により面会が実現していませんでした。

そして、ちょうどM&Aの基本合意が結ばれた直後に山下氏が亡くなったという連絡が入ったことは、まさに青天の霹靂でした。

借地権契約から建物の賃貸契約へ

その後、前田クリニックが建つ土地は、山下氏の配偶者である恭子さん(仮名)が相続することになり、改めて恭子さんと借地権の承継を巡る話し合いをしました。

しかし、恭子さんは、山下氏が口頭で約束していたM&A後の借地権契約の締結を拒否します。その代わり、恭子さんが前田クリニックの建物を前田先生から買い取り、その建物を安田先生に賃貸することを提案なさいました。その場所でクリニックを続けたいなら、その提案を受け入れるしかありません。

建物の賃貸契約になれば、地代のみの支払いより賃料は上がります。山下氏が提示した賃料はそれまでの地代より5割ほど高いものでした。安田先生としては、ランニングコスト増になることは不満であり、一時はM&Aが破談しかけました。

しかし、当初M&Aの譲渡対象になるとされていた建物が譲渡資産に含まれないことになるので、その分M&Aの譲渡対価を下げることができます。

私たちは、将来にわたって想定される費用の増加を現在価値に割り戻した上で、M&A価格をその分引き下げることで前田先生、安田先生両者の合意を得ることができました。一時は暗礁に乗りかけましたが、このようにして最終契約にたどり着いたのです。

契約後の、「これで、地元の皆さんへの責任が果たせました」という前田先生の言葉が印象的でした。

本事例のポイント

最後に、本事例のポイントをまとめておきます。

①個人医師ならではの、人間的な要素を踏まえた提案ができた

法人が買い手になる場合は、収益性とコストが見合うかなど、どちらかといえば数値的、定量的な面をビジネスライクに判断して、譲り受けの可否を決定します。

一方、買い手が個人医師で自らを院長として診療する場合、収益性ももちろん重要な要素ですが、それ以外に自身のライフステージやライフプラン、あるいは生活スタイルや好みなどの人間的な要素も大きく影響します。今回は、コンサルタントがそういった部分を十分に把握した上で、安田先生のライフステージなどにマッチするご提案をできたことが、成功のポイントでした。

②地権者が亡くなるという想定外の事態にも対応できた

M&Aのプロセスは時間がかかるため、その最中に想定外のトラブルが生じることはよくあります。今回のように重要な関係者が亡くなってしまうことも、まれにあります。

人が変われば話の内容も変わってしまうこともありますが、そのような際に白紙に戻してしまうのではなく、新しい状況に対応しながら最適な着地点を探れるかどうかは、コンサルタントの経験値が大きく影響する部分です。

③地銀の担当者ともコミュニケーションを取りながら進められた

売り手の前田先生は、地銀からのご紹介でした。地銀の担当者は、地元経済で中心的な役割を果たしており、前田先生に融資もしていたことから、単に話をつなぐだけではなく、積極的にM&Aの条件交渉面などにも関与してきました。

私たちは当初から同行の担当者とも密にコミュニケーションを取り、その意見も参考にしながらプロセスを進めていたため、それが売り手の前田先生、買い手の安田先生双方にとって安心材料となったことは間違いありません。最終的に、同行も含めたすべての関係者が納得できる承継を実現することにつながりました。

後継者不在で悩まれている方は、ぜひ一度お問い合わせください。

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