高齢化

特別編【北海道×内科】28年間続いた地域医療を1億5,000万円で承継した物語

公開日
更新日
高齢化
エリア
北海道
診療科目
内科
運営組織
医療法人
譲渡理由
医療法人
運営年数
28年

白い大地に根差した医療を、未来へ託すために──地方都市の高収益クリニックが実現した理想の承継

北海道の地方都市にある「北里ほしの内科医院(仮称)」は、28年間にわたり地域住民に愛され続けてきました。
しかし、理事長の体調面での不安から、ついに承継を決断する時が訪れます。
「地方だから買い手が見つからないのでは」という懸念を覆し、最終的に複数の医師が手を挙げ、1億5,000万円という高額での譲渡が実現した背景には、どのような物語があったのでしょうか。

本記事は、通常の成約実績とは異なる特別編として制作された成約ストーリーです。
医院を「託す側」と「継ぐ側」の2人の医師の想いと歩みを、ストーリー形式でご紹介します。
※匿名性保護のため、登場する人物などの名称、地名や設定の一部にフィクションを含んでおります。

<主な登場人物紹介>

【売り手側】
氏名:星野康介(仮名)
年齢:72歳
立場:医療法人北星会 北里ほしの内科医院(仮称)理事長
医院運営:28年
背景:心疾患を患い、夫婦での時間を大切にしたいと医院承継を決断。地方都市でありながら年商2億円超の高収益経営を実現してきた名医。

【買い手側】
氏名:月本雅人(仮名)
年齢:38歳
立場:北海道の公立病院の勤務医
専門:内科
特徴:公立病院で勤務医として経験を積み、地域医療への強い使命感を持つ。北海道全域で承継案件を探していた中で星野理事長のクリニックと出会う。

起|妻との約束が導いた人生最大の決断

起|妻との約束が導いた人生最大の決断

雪がちらつく12月の夕方、星野康介理事長は診察室の窓から北海道の白い街並みを眺めていました。

「もう28年も、この景色を見てきたんだな」

そうつぶやきながら、星野理事長は胸の奥でかすかに感じる違和感に手を当てていました。

半年前の検査で見つかった軽度の心疾患は、まだ深刻な状態ではありません。

しかし72歳という年齢と重なって、自分の体力の限界を意識せざるを得なくなっていました。

星野理事長が「北里ほしの内科医院」を開業したのは、44歳のときです。

大学病院での研修を終え、地元である人口15万人弱のこの街に戻ってきたのは、「故郷の医療を支えたい」という純粋な想いからでした。

開業当初は、患者もまばらでした。しかし、星野理事長の丁寧な診療と真摯な姿勢が次第に地域に根付き、やがて近隣からも患者が訪れるようになっていきました。

そして現在では年間売上が2億円を超える、地方都市としては非常に高収益なクリニックへと成長したのです。

「でも、妻との時間をもっと大切にしたい」

妻の雪子は、開業以来ずっと星野理事長を支え続けてきました。

診療に追われる日々の中で、二人きりの時間はいつも後回しになっていたのです。

「元気なうちに、一緒に海外旅行でもしたいね」という妻の何気ない一言が、星野理事長の心に深く刺さっていました。

そんなある日、星野理事長は重要な決断を下します。

「クリニックの承継を検討しよう」

妻の雪子は少し驚いた表情を見せましたが、やがて優しく微笑みながら、こう言いました。

「あなたが決めたことなら、私も応援するわ」

承|都市部との格差に悩む中で見つけたクリニックの価値

承|都市部との格差に悩む中で見つけたクリニックの価値

承継を決意した星野理事長でしたが、一つの大きな不安がありました

それは「地方都市のクリニックなんて、本当に買い手が見つかるだろうか」ということ。

人口15万人未満の街。札幌のような大都市と比べれば、将来性に疑問を持たれても仕方がないことでした。

インターネットで医院承継について調べれば調べるほど、都市部の案件ばかりが目に付きます。

しかしエムステージの担当者は、星野理事長の不安を和らげるように丁寧に説明しました。

「星野先生のクリニックは、地方都市としては極めて魅力的な案件です。年商2億円超という実績は、都市部でも簡単には見つからない優良物件ですよ」

担当者の言葉通り、案件を公開すると予想を上回る反響がありました。北海道内はもちろんのこと、本州からも問い合わせが殺到したのです。

「こんなにも多くの方が関心を持ってくださるなんて」

星野理事長は驚きと同時に、28年間積み上げてきた実績への誇りを改めて感じていました。

決して簡単な道のりではありませんでした。

特に開業から最初の5年間は、患者数も少なく経営は綱渡り状態。それでも地道に信頼を積み重ね、地域になくてはならない医療機関へと成長させてきたのです。

複数の買い手候補が現れる中で、当初は隣町で開業経験のある城田先生(仮名)が有力候補として浮上していました。

経営経験があり、引き継ぎ期間なしでもすぐに診療を開始できるという点で、星野理事長も安心して委ねられると考えていました。

そのような中で現れたのが、月本雅人先生です。

最終的に買い手となる月本先生は、じつは本事例において最初は遅れを取っていたのです。

転|遅れてやってきた医師が起こした大逆転

転|遅れてやってきた医師が起こした大逆転

月本雅人先生は、北海道の室藤市(仮称)にある公立病院で内科医として勤務していました。

室藤市は人口減少が著しく、病院の将来性にも不安を感じていたのです。

「いつかはクリニックを開業したい。でも、どこでどのような形で始めるべきか」

そんな迷いを抱えていた月本先生に転機が訪れたのは、ある寒い2月の夜でした。エムステージからの連絡で、星野理事長のクリニック承継案件を知ったのです。

資料を読み進めるうち、月本先生の心は大きく動きます。

年商2億円という実績もさることながら、何より星野理事長がこの地域で築き上げてきた医療への想いに共感しました。

「地方都市でここまでの信頼を得るには、並大抵の努力では不可能だろう…」

しかし、月本先生が星野理事長に面談を申し込んだときには、既に城田先生との交渉がかなり進んでいました。

「これは厳しいかもしれない」

それでも月本先生は諦めませんでした。現地を訪れ、クリニックの周辺を歩いて回りました。患者として来院している高齢者の方々に話を聞く機会もありました。

「星野先生にはとてもお世話になっているんですよ。あの先生がいなかったら、私たちはどうなっていたか」

そんな患者の声を聞くたび、月本先生の想いは強くなっていきました。

面談当日、星野理事長は月本先生に率直に伝えます。

「正直に申し上げると、ほかの先生との交渉を優先的に進めている状況です。月本先生にも魅力を感じているのですが…。」

そのとき、月本先生は静かに、しかし確信を込めて答えました。

「星野先生、私は必ずこのクリニックを承継したいと思っています。金額的な面でも、他の候補者を上回る条件を提示させていただきます」

城田先生をはじめとした他の候補者は、一般的な算定方法に基づいて1億円程度の価格を提示していました。しかし月本先生は、迷うことなく1億5,000万円という金額を提示したのです。

「なぜそこまでして?」という星野理事長の問いに、月本先生は答えました。

「先生が28年かけて築き上げてこられたものの価値は、単純な計算では測れません。私にとってこのクリニックは、理想の地域医療を実現できる唯一無二の場所なんです」

その言葉と表情から、星野理事長は月本先生の本気度を感じ取りました。

金額もさることながら、この若い医師なら自分が築き上げてきた医療を正しく継承してくれるだろうという確信が芽生えたのです。

結|雪解けとともに始まった新たな医療

結|雪解けとともに始まった新たな医療

3月の承継契約締結から半年が経過しました。

星野理事長の決断通り、引き継ぎ期間は一切設けずに完全リタイアとなりました。

当初は患者にも戸惑いがあったものの、月本先生の誠実な診療姿勢が徐々に信頼を獲得していったのです。

「新しい先生も、とても丁寧に診てくださるのよ」

患者からそんな声が聞こえてくるようになり、星野理事長は安堵の表情を浮かべました。

月本先生は承継後、電子カルテの導入や診療体制の効率化を進めながらも、星野理事長が大切にしてきた「患者一人ひとりと向き合う医療」の精神は変えることなく継承しています。

一方、星野理事長は念願だった妻との時間を満喫していました。承継から2か月後には、長年の夢だったヨーロッパ旅行を実現。

「こんなにゆっくりと二人の時間を過ごせるのは、何十年ぶりかしら」と妻の雪子は嬉しそうな笑みを浮かべます。

ある日、星野理事長のもとに月本先生から近況報告の連絡が届きました。

「おかげさまで、患者さんとの信頼関係も徐々に築けてきています。星野先生が残してくださった財産を、しっかりと受け継いでいきます」

電話を切った後、星野理事長は窓の外を見つめた。

雪解けとともに始まった新緑の季節。自分が託した医院では、新たな医師が地域医療の未来を切り拓いている。

承継とは、終わりではなく始まり…。

北海道の白い大地に根差した医療は、新たな医師によって次の季節へと歩み始めました。

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M&Aにおける課題や論点(売り手側)

完全リタイアを希望する理事長:
理事長・星野医師(72歳)は心疾患を抱えながら週4日診療を継続していたが、余裕のあるうちにリタイアし、夫婦での海外旅行などを楽しみたい意向が強く、引き継ぎ期間を一切設けない条件での譲渡を希望していた。

医療法人のガバナンス移行と税務構造:
無借金経営かつ高収益の医療法人であり、出資持分と退職金のバランス設計が税務面での最適化に直結するため、専門的スキームの構築が不可欠だった。

地方都市であることへの不安:
人口15万人未満の地方都市という立地により、「買い手が現れるか」という懸念を本人も当初抱えていた 。

M&Aにおける課題や論点(買い手側)

候補として後発でのオファー:
買い手の月本医師は後から参入し、既に売り手側が他候補(A氏)との交渉を進めていたため、交渉ポジションとしては不利な立場からのスタートだった。

引き継ぎ期間なしでの即経営:
 併走期間なしでの承継条件だったため、すぐに診療・経営を開始できる体制・覚悟が求められた。

地方開業への慎重姿勢:
元勤務先の市は急激な人口減少に直面しており、開業地を北海道全域に広げていた中で「人口動態・将来性」に納得できる案件かの見極めが課題となった。

M&Aの成功要因

買い手の強い意志と迅速な行動:
他候補が1億円台の提示をする中、月本医師は「譲り受けたい意志」を込めて1億5,000万円の高額オファーを即決で提示。これが売り手の心を動かした。

理念・ビジョンへの共感:
星野医師が「金額だけではなく熱意で選びたい」と述べていた通り、月本医師の誠実さや将来構想が評価された。

法人の財務健全性と税務的工夫:
譲渡対価の大半を退職金として設定することで、税務上の繰越欠損が活用可能となり、買い手にも合理的なスキームが構築された。

市場評価に裏付けされた競争力:
地方でも年商2億円超の優良経営実績により、多数の買い手が集まり、価格競争によって高額譲渡が成立した。

M&Aの譲渡スキーム

医療法人の出資持分譲渡+退職金支給:
出資額は nominal(出資額相当)とし、法人から星野医師への退職金を主な譲渡対価とする構成。これにより税務上の繰越損失が発生し、買い手法人にとって節税メリットとなった。

譲渡価格:
最終的に月本医師が提示した譲渡価格は 1億5,000万円。これは当初提示の1億円から約1.5倍増額された条件であった。

引き継ぎ期間:
一切の診療併走期間を設けず、契約成立後に星野医師は完全リタイア。すぐに月本医師が診療運営を開始した。

<本件のM&Aスキーム図解>

承継後の変化と成果

診療継続と患者の信頼維持:
院長交代により一時的な患者数減はあったものの、大半の患者は継続受診しており、地域医療への信頼が保たれている。

電子カルテ導入など業務効率化:
月本医師が電子カルテを導入するなど、現場オペレーションの改善にも着手している。

買い手にとっての理想的な承継:
高収益・好立地・競合が少ないという条件下で、理想的な独立開業を実現できた好事例となっている。

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